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僕らの町には桜並木がある

 僕らの住む町には桜並木が植えられている。僕たちはそのなかでも一際大きくて立派な木を、親しみを込めて「ハル」と呼んだ。
「ハルは今年も咲くかしらね」
 香苗が言う。僕の妻は少し心配性だ────。

 町民の愛す桜並木を移動させるという計画が持ち上がり、僕と妻は困惑する。美しい桜の、その下で人が消えた。

 少女が歌い、回る。

 お喋りな女性社員が可笑しそうに噂話をするのを、僕はぼんやり聞いている。少女の青白い顔を思い出しながら。

「この子は女の子だと思うの」
 細い躯には似合わない大きな腹をなでながら、妻はうっとりと言う。そうかもしれないね、と僕は答えた。

 少女が歌い、回る。悪戯の成功した子供特有の笑顔で。
 かわいそう、と妻は言った。昔からよく見た表情で。
 そして僕は、今日も桜並木の下を通って職場へと向かう。

夏じゃない 作者の趣味全開 春 文学を目指した

小説情報 短編 怖い:16 ID:306698hibana

フラットウッズの怪物

 その山は昔から神隠し伝説が伝承され僕のような地元のオカルトマニアの聖地の一つとなっている。
 五年くらい前、その山の付近で男女四人の若者の失踪事件が起こった。現代の神隠しか?と一時期地元で大騒ぎになった。彼らの行方は警察や地元の消防団による山付近を重点的に数十人を毎日動員して一週間探索したにも関わらず所持品一つ発見出来なかった。やがてこの事件は不可解な闇に消えていった。
 しかし僕は警察も発見できなかった遺留品を偶然見つけたのだ。
 時代遅れのビデオカメラ用のコンパクトビデオテープを一本。
 そこには驚愕の光景が映し出されていた。それとあれが映っていた。
 あれは一体何なのか?それはこれから見た人が考察して欲しい。

小説情報 短編 怖い:0 ID:218177ヘッツアー

※決して食事を与えないでください



――※決して食事を与えないでください――



 私たち夫婦は、都心から少し離れたこの田舎街に引っ越してきた。
 自然に囲まれた閑静な住宅街。都会の喧騒から離れられたことは有り難かったが、その分当然、虫も多い。
 ある日、虫嫌いの妻がネットで見つけた【むしとり地蔵】なるモノを注文していた。数日後に届いたのは赤ん坊ほどの大きさの石地蔵。怪しい品物だと思ったが、それを玄関に置いてからはぴたりと虫がでなくなった。
 発売元もよくわからなかったが、充分すぎる効果に私たちは満足していた。
 ただ私たちは、【むしとり地蔵】の説明書の最後に書かれてあった注釈に、そのとき気づかなかったのだ。

『取り扱いに十分注意したうえで
 以下のことを必ずお守りください。

 ※使用期限は開封から三年後です
 ※危険なので割らないでください
 ※使用後は地面に埋めてください

 ※決して食事を与えないでください』

R15 残酷な描写あり 地蔵 むしとり 妻

小説情報 短編 怖い:485 ID:335838裏山おもて

一夜怖話~『甘い誘惑』、『覗き窓』~

 ピンポーン。

 アパートの居室に音が鳴る。俺はそれに気付く。
 友人と思い、警戒もなく玄関へ向かった。部屋を抜ける時、転がっていた置き時計に躓く。蹴飛ばしたデジタル時計の文字盤にはゼロが三つ並んでいた。
 時計を蹴った痛みに足を擦りながら、ドアの前につく。
 
 そっと、覗き窓を見た。誰もいなかった。
 ドア越しに声をかけるが、反応はない。
 訝しげに思いながらもドアの鍵に手をかけ、開ける。
 アパートの廊下を眺める。おかしなところはなく勘違いかな、と思って扉を閉めようとした時、

 ピンポーン。

 部屋の中から音がした。え、と戸惑い部屋までの廊下に振り返る。
 アパートの廊下に視線を戻した時にそれに気づいた。


             ――――「覗き窓」予告編
      
 ※本編とは多少内容が異なっております。ご了承ください。
  短編集として他一編、「甘い誘惑」も同時掲載致します。一夜の涼みになればと思います。

短篇集 甘い誘惑 覗き窓 生放送朗読OK

小説情報 連載(全2部) 怖い:15 ID:63230荻雅 康一

蝋燭と影

 私は自宅で一人感傷に浸っていた。三日前の出来事により生じた衝撃は耐え難いものであり、私をドン底に落とすには充分だったのだ。
 それは愛してやまない彼女との別れ。その出来事は私の精神に爪を立てて訴える。

 彼女と別れてからの三日間を記憶することを、どうやら私の脳は拒絶したらしい。近くに散らばる数種類の酒瓶がその主犯だろう。
 そんな中でおぼろげに覚えていることは彼女と共に映画鑑賞をしたこと。
 だが、そんなことは絶対にあり得ないのだ。私は、彼女と別れたあとに彼女とは言葉を交わしてない。連絡もとっていない。
 だから、映画鑑賞を共にしたはずがないのだ。
 なのに、おぼろげな記憶がある――そんな馬鹿な!

 ならば、もっと記憶を確かにしよう。できるだけ早く、正確に思い出せ。虚実の判断つかぬこの映画鑑賞の記憶を。彼女との思い出を。
 感傷に浸る時間は終わりだ。私にはもう一瞬たりともムダにできる時間は残されていない。大切な彼女との記憶を思い出し、彼女に謝罪をしなければ。
 そして彼女との出来事が正しく脳に刻まれた時に、私はやっと苦しみより解き放たれ、救われるはずなのだ。

R15 短編 別れ 別離

小説情報 短編 怖い:1 ID:270154THEきよしα

砂場

 「僕は自由なんだよ」

 夏休みのある日、私が公園の砂場で出会った男の子はそんな事を言った。夏の日に数日だけ、一緒に遊んだ男の子の事を覚えている。最後まで、名前を聞くことすらなかったその男の子は、砂場から出る事はなかった。
 公園の砂場で始まって、公園の砂場から出ることなく終わった幼い日のちょっとした恋心は、私に少しだけ自由と幸せを与えてくれた。
 不思議な事は何も起こらなかった。怖い事も無かった。あったのは、出会って別れた事。それだけだった。

恋愛 現代(モダン) 少女 少年 小学生

小説情報 短編 怖い:14 ID:481332犯人

真夏日の犬

 実家で飼っていた犬のハヤトが死んだという。十二年間可愛がってきた、とても賢い犬だった。

 酷暑の盆休みに帰省した僕は、母と祖母が二人で暮らすその家のあちこちに奇妙な気配を感じた。古い畳の上を小さな四本脚が歩く音、板張りの廊下を移動する黒い影。『それ』はハヤトなのか、あるいは別の何かなのか。
 
 気難しい祖母と、愚痴ひとつこぼさずその介護を務める母。表向き静かで平穏な生活だった。蒸し暑い空気が淀んだ古い家には、しかし、確かに何かが息づいて、ゆっくりと成長しつつあった。やがて『それ』はある姿を取って、僕の前に現れるのだった――。

残酷な描写あり 怪談 親子 田舎 犬 呪い

小説情報 連載(全4部) 怖い:357 ID:191255橘 塔子

渡船

 
 ざぶん、ざぶん。
 ギィ、ギィ。
 波と波が打ち合う、音。

 善次郎はそこでふと目を覚ました。
 視界が霞んでいるのか辺りが霞んでいるのか。
 眼をこすりこすり、漸う意識を取り戻す。

「……ここ、は?」

 明瞭になった視界に映るは一面の、白、しろ、シロ。

「お目覚めですかい、旦那?」
 
 己以外の声が聞こえたことに驚いて振り仰げば、白髪交じりの見知らぬ男が立っていた。男は、黄ばんだ歯をにっと見せて笑う。

 ざぶん、ざぶん。
 ギィ、ギィ。
 波の音、櫓の軋み。


 善次郎が出会った男とは果たして――。

江戸時代

小説情報 短編 怖い:5 ID:369730s

主人公は人食い

 怖い体験をする人が主人公って訳、無いよね?
 別に私が主人公でも問題無いよね?
 私が夜な夜な人間を食べているとしてもね。
 
 最近、私の通っている中学校で疾走事件が絶えないらしいよ?
 怖いね~。
 もちろん私の友達だって疾走しているよ?
 でも、寂しくないんだ。
 いつだって一緒だもん。
 だって胃袋の中だもん!
 この前食べたのは先生でさ~、女だったんだけど、包丁で右足切り落とした時の顔と言ったら、くっくっ!笑っちゃうよ。
 どこで食べてるのか?自分の家だよ。地下だよ。
 親なんて、とっくの昔に食べてるよ。
 イライラしたから包丁でグサだよ。
 お腹空いたから切り刻んで食べたよ。
 もちろん警察には親に捨てられたって言ったよ。
 警察は家に来たけど、地下室は見つからなっかった。
 当たり前だろね。だって、地下室への階段は玄関の石畳の下だもん!

 「お~い、志乃!なにボーっとしてるんだ?」

 「ううん!何でもないよ!友君!」

 次は君だよ。

小説情報 短編 怖い:2 ID:486539瞬華

祭り

 小さな呉服店を営んでいる富吉は、親戚の家へ嫁いだ姉の出産祝いの為、雪山を越えて隣町にやって来た。奇しくも町は祭りの最中であったらしく、すれ違う人々は賑やかで、富吉の心も弾んだ。
 義兄の店に着き、赤ん坊のかわいさを堪能した後、富吉は祭りについて尋ねる。すると義兄は、お前は実に運が良いと告げた。曰く、この祭りは他では絶対に見られない、珍しいモノが見れるのだ、と。
 興味を惹かれた富吉は祭りを見物に行く。しかし、祭りの会場には目新しいものはなく、仕方なく富吉は、近くにいた老人に珍しい物について尋ねる。すると、老人は勿体ぶった口振りで話し出した。

――――首を切っても死なない男だよ。

R15 残酷な描写あり 時代小説

小説情報 短編 怖い:4 ID:57780トミー

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